時間医学(1)

放送大学の面接授業に行ってみました、2度目。文京での授業は初。
こんな授業(授業詳細より)。

科目名:時間医学
担当講師:久 智行 (産臨介事務所所長(産業医・臨床心理士・介護支援専門員)、放送大学客員教授)、中川 晶 (奈良学園大学教授)
【授業内容】
太陽の下で生活する動物のみならず洞窟に住む動物でも時間のリズムをもっています。ホルモンの濃度は朝夕で変動し、ホルモン剤を投与するときは時刻を考慮します。抗がん剤を投与するときに朝夕で量を工夫すると、副作用を少なくできることがあります。心筋梗塞や脳虚血障害が起こりやすいのは明け方です。夜間労働者の健康ある種の疾患が発生するとも言われます。心臓疾患や脳虚血疾患の予防や夜間労働者の健康に、体内時計の調節が役に立つかもしれません。人も企業も共に幸福になるかもしれません。(なお、以前の受講生の希望に従い、睡眠・細胞周期・老化・進化論・化粧品などについても少し触れたい、と考えています。)

実は昨年度後期にもあった授業で、そのときは抽選に落ちてしまったのですが、今回は無事受講できました。
人気なのかな? 講義室いっぱいだったので今回もいっぱいだったのでしょう。

初日の今日は中川先生のご担当。ですが、半分は睡眠文化研究会の鍛冶恵先生がご担当でした。

1限: 現代睡眠事情 (鍛冶先生)

配布資料のこのタイトル見て、教室間違えたかと思いました。あれ?時間医学じゃなかったっけ?って。
トピックとしては、日本人の睡眠時間は短くなっている、起きる時間はあまり変わらないけど寝る時間が遅くなってる、体内時計の話(24時間より長いので後ろにずれやすい。起きた16時間後に眠くなる)、睡眠関連サービス・商品が最近増えている…と、トピックとしては目新しいものはなかったのですが、グラフと一緒にまとまった話が聞けたので、自分の知識が整理できて良かった。

2限: 時間医学-ストレス編- (中川先生)

  • 時間とはあまり関係ないけど午後の話に繋がります…ということでストレスのお話。
  • 「ストレスがかかると反応が出る」というのは人間としては当たり前のことで、それがない人はむしろ危険。心に出るか、身体に出るか、行動に出るか…それは人によって異なる。
  • うつになりやすいのは悲観的なタイプ、なりにくいのは楽観的なタイプ。
  • セリグマンの学習性無力感の実験 (犬をうつ状態にする)
  • 囚人のジレンマの実験

箇条書きにすると少なくなってしまうのですが、患者さんの話や実験の話、雑談的に色んな話をしてくださったのでとても面白かったです。東大7回落ちて学習性無力感の状態になってたけど、ひょんなきっかけで料理学校に入学して(もともと料理は得意だった)、料理人になった患者さんの話とか、他にもいろいろ、してくれました。

3限: 私たちは何を着て眠ってきたか (鍛冶先生)

「時間」とも「医学」とも関係ないお話で「え??」という感じでした…でもシラバスをよく読むと「以前の受講生の希望に従い、睡眠…(略)などについても少し触れたい」とあるので、「少し触れた」ということなのでしょうか。でもこれで1限分使わなくても…。睡眠に関する講義ならそういう名前の講義にしてもらいたいものです。
日本の寝間着の歴史と、日・米・韓の寝間着の比較、など。文化史的な話としては面白かったと思います。

4限: 「眠り」のナラティヴ (中川先生)

  • 医療のメインストリームは EBM (Evidence Based Medicine) だけど患者に受け入れられにくい。そこで登場したのが NBM (Narrative Based Medicine)。
  • Narrativeは物語の意味。患者は自分なりの「病気に至る物語(原因)」の考えがあって病院に来るわけで、その物語との擦り合せをいながら、一緒に治療していきましょう、という話。
  • 不眠症のプラシーボの話
    不眠患者に対して眠れるようになる薬の実験をする。以下の3グループにわけて治験を行うと不思議な結果に。

    1. 本物の薬を飲むように指示 → 平均1時間程度早く寝付けた。
    2. 偽薬を「眠れるようになる薬」と言って飲むように指示 → 1ほどではないが早く寝付けた。
    3. 偽薬を「眠れなくなるする薬」と言って飲むように指示 → 早く寝付けた(!)

    「眠れないのは自分のせいじゃない」と考えたら寝れてしまった、という話。

などなど。ここでも患者さんのお話が出てきて、面白かったです。なんか「時間」からは離れてましたが、面白かったからまぁいいか。
EBMは例えば「あなたの5年生存率は32%です」なんて言われても患者さんは「で、私はどうなるんですか?」と思ってしまうわけで、受け入れ難いということだそう。私は確率で言われた方がむしろ正直でわかりやすくて良いと思ってしまうのですが、これは理系だからこそなんでしょうね。


…というわけで、今日は「時間医学」というよりは「睡眠学」という内容でしたが、面白かったです。
明日は生物学的なお話で、たぶん聴きたいと思っていた内容の講義が聴けるはず。楽しみ。

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