学術書を読む

twitterで見掛けて迷わずポチり。「読んでいない本について堂々と語る方法」を読んだばかりで、読書本が続いている(「読んでいない本〜」については後日書く、つもり)。

「わかりやすい」の危うさ

「わかりやすい」本とはほとんど何の躓きもなくすらすら読めるが、その分、学問的な精密さや深さに欠ける、ということ。私は「スラスラ入ってくるわかりやすい説明」を聞くと騙されてるんじゃないか?という気持ちになるので、とても感覚に合う。厳密な部分がわからないので「わかりやすそうなのに、わかりにくい本だな」と思ってしまいます。そして結局いかにも難しそうな専門書を読むハメになる。でも結局そっちを読んだ方がすっきりします。「「わかりにくい」と言われる本は理解するのに根気と時間と好奇心を必要とする」とこの本にありますが、まさにその通りなんだろう。

三中さんが「流動食のような」本という表現を使っているそうですが、これは本当にうまい表現ですね。さらさらっと読める本って本読んだ気にならない…。

専門外の知識を取り入れることの重要さ。専門外の本の選び方、読み方。

自分の専門だけわかってりゃいいわけじゃないって話。そのために、専門外の本を読むわけ。専門外の本と言っても色々。以下の4カテゴリに分けられるという話と、それぞれの選書のポイントが書かれてます。(第II部)

  1. 自らの専門からは遠い分野 → 良質の科学史・社会文化史
  2. 自らの専門に比較的近い分野 → 大きな問い、対立の架橋
  3. 古典 → メタ知識
  4. 現代的課題についての本 → 歴史的視野から

「遠い分野は科学史から」というポイントはとても学びになりました。ついつい初級の教科書を探してしまうのですが、歴史を知ってからの方が理解が進みますね。

impact factorやら大学ランキングやらのマッチポンプ・ビジネス

impact factorの高いジャーナルに掲載されやすい研究を選ぶ研究者が少なくないとか、しかしそのような雑誌に掲載されたからと言って被引用が多いわけではないとか。論文数で業績評価したりするけど、分野によってその数って変わるよね、サッカー選手と野球選手を取った点数で比べられないでしょ?て話とか。ほんとそう。

しかし民間企業だと給与/賞与を決めるのに数値評価して比べたくなる。数値なら誰でも比べられるから。だから特許出願数、論文数、で評価してる。しかも1年単位。こういう事務的/政治的事情で研究テーマ決めるってどこもあるんだろうな。上司の評価、部署の評価、にも関わるからね…。

あとこれ。

自らが集積した欧米語で書かれた学術雑誌から (決して完全とは言えない) データベースを作り、それを計ることで「格付け」を示し、さらには「格付け」を上げるためのコンサルティングを行うという仕掛けがあるということです。

あー…、そういうことね。

この辺の話は第III部ですが、この部分はあらゆる研究機関のマネジメント層に読んでもらいたい内容でした。

沢山の魅力的な学術書の紹介

これは本当にたくさん。

  • W.K.ハイゼンベルク「部分と全体」
  • ヘルマン・ワイル「空間・時間・物質」
  • マンジット・クマール「量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突」
  • デイヴィッド ボダニス「電気革命: モールス、ファラデー、チューリング」
  • 廣田 襄「現代化学史: 原子・分子の科学の発展」
  • 小浜正子「一人っ子政策と中国社会」
  • H・コリンズ , R・エヴァンズ「専門知を再考する」

科学史ものは「遠い専門外の本を読む」という流れで紹介されていたもので、電気なんかまさに専門分野なのですが、専門だからこそ「歴史としての電気」も面白いし興奮するんですよね。「あ、この人とこの人が…!」みたいな。だから気になる。結局のところ、専門の距離がどうであれ、科学史って面白いんですよね。社会的な背景との関わりも知れるのが良いです。


長く書いた割にあまり内容ない記事になってしまった。

研究との向き合い方、専門外の分野への関わり方、本の読み方など、見直すきっかけとなりました。いい本だった。また定期的に読み返したい。

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