うすうす感じていたこと

日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)遺伝学の本ですが、筆者が教育心理学者でもあることもあり、多分に教育についても語られてる本です。

内容については「はじめに」からの引用で。
「みなさんがうすうす当たり前と感じながら、それに科学的な根拠があることがあまり知らされていないので、それがほんとうに科学的に当たり前であることを伝えたかったから」この本を書いたそうです。たとえば

才能には遺伝がかかわっていること、
収入にも遺伝がかかわっていること、
才能に気づき育てるには経験と教育が必要であること、
しかしそれはいまの学校教育の中で必ずしもできるわけではないこと、
それは知能や学力に遺伝の影響が大きいからだということ、
学校は遺伝的な能力の個人差を顕在化させるところだということ、
でもこの世の中は学力がすべてではないこと、
学力とは異なる遺伝的才能を生かした人たちでこの世界は成り立っていること、
才能のないところで努力してもムダだということ……。

「誰でも努力すれば勉強はできるようになる」と信じられているけど絶対そんなことないよな、と薄々感じてる人は多いと思う。やっぱ持って産まれた才能ってあります。「努力できるというのが才能」という言い方もできますが、数学的な考え方をすぐ理解できる人・できない人ってやっぱりいます。どういう環境で育ったってだけではない。
それをデータを使ってきちんと解析しましたってお話。

「科学的な根拠」は双生児法を使ったデータです。ざっくり言うと「一卵性双生児と二卵性双生児の類似性を比較する」というのが双生児法。「双子の研究たって同じように育てられるんだから、遺伝と環境の影響を分離するのは困難なのでは?」と今まで思っていたけれど、なるほど、二卵性と一卵性とを比較するんですね。一卵性双生児は遺伝子が100%同じ、二卵性の遺伝子は50%類似、ということを利用する、と。

ところで、印象に残ったのはこの文。

私自身は元々、強固な環境論者でした。「才能は生まれつきではない」「人は環境の子なり」をスローガンにしたヴァイオリンの早期教育、スズキメソッドの創始者鈴木鎮一氏の思想に深く傾倒し、教育学の卒業論文テーマひ選んだほどです。

だそうで。ここでいきなりスズキメソードが出てきたのにもびっくりしましたが、スズキメソードのスローガンも知らなかったし、何より著者が元々環境論者だった、というのを知り、この本の信憑性が高まった感じがしました。

「親が子供のためにすることは無駄ではないけど、能力はある程度遺伝で決まってるのだから、どうしようもない点もある」というのは子育てするに当たって知っておくと、気が楽になるなぁ、と思いました。
他にも色々書かれていますが、まぁ要は「はじめに」の↑で引用した内容です。

行動遺伝学という分野は初めて知りましたが、面白いですね。他の本も読んでみようかしら。

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